着心地

「自分の好きな服」を時々考える。好きな服って難しい。

昔はヴィヴィアンウェストウッドの洋服が憧れだった。細身で独創的な服を着こなす。スキニーパンツとマーチンの8ホール、美しいシャツにイカしたジャケット。そんなふうになりたかった。

でもそうはならなかった。まずお金。自分の夢の服を追いかけ続けるとどう考えても年収1000万くらいないと追いつかない。しがない会社員の私がその域に達することができるのは一体何歳になるだろう。

そして何よりも自分の身体。まず足が長くない。細身とは縁遠い体格。角ばった顔。全てが私の夢の服からは遠い。夢中になって読んでいた雑誌のモデルたちとは似ても似つかない、そんな自分に気がついてしまった。いろんなスキニーパンツを試してみたりもしたが、どうもバランスが悪かったりして、自分は細身のおしゃれにはなれないんだと挫折した。

小さい頃にシルバーアクセサリーが好きになって、そこからファッションに興味を持って、少ないお小遣いを叩いて雑誌とアクセサリーを買っていた自分が、そこで立ち止まってしまった。

 

自分はどんな服を着ればいいんだろうと悩んで生きているときに、1着のパーカーに出会った。

 

それは小さなお店で、店主がこだわって作っているスウェットパーカーだった。なんとなく見つけて入ったそのお店で、そのパーカーに触れた時に自分の中で何かが変わった。

それはしっかりと肉厚で、そして柔らかさを兼ね備えていた。リバースウィーブに代表されるようなスウェットはとても上質なのだが、やや硬いなと思って、買おうとしても少し悩んでしまっていた自分はそこで衝撃を受けた。袖を通すとその触りごごちに違わず、身体にしっくりと馴染む着心地がそこにはあった。そして上品なオフホワイトの色味。自分の中の理想系がそこにはあった。

 

自分の身体に合った服、着心地のいい服って、こんなに気持ちいいいんだ。

 

今まで知らなかった。今までの自分は「周りから見たときにかっこいい」ことが大切で、自分の理想の造形をそれに重ね合わせていた。でも今は違う。自分に寄り添ってくれる服の心地よさ、自分が自然にいられることの気分の良さが大切になった。

 

自分の好きな服の考え方に新しい風を吹き込んでくれた、このパーカーに出会えたことに感謝。

 

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